心不全や腎臓の病気(CKD)があると、
「薬が増えて不安…」「この薬は何のため?」
と感じることもあると思います。
今回は、心臓と腎臓を同時に守る薬である
MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)について、
新しいお薬「フィネレノン」も含めて、ご説明します。
MRAとはどんな薬?
MRAは、体の中で働く
アルドステロンというホルモンの作用を抑える薬です。
アルドステロンは、
- 塩分や水分を体にため込む
- 血圧を上げる
- 心臓や腎臓を少しずつ傷める
という働きがあります。
心不全やCKDでは、このホルモンが過剰に働き、
病気を進める原因になります。
MRAは、この悪循環を抑える薬です。
心不全に対するMRAの役割
心不全では、心臓が無理をしながら働いています。
MRAを使うことで、
- 心臓の負担を軽くする
- 心臓が硬くなる変化を抑える
- 息切れ・むくみの悪化を防ぐ
- 心不全による入院や再発を減らす
といった効果が期待できます。
長期的に心臓を守る薬として、世界中で使われています。
腎臓病(CKD)にとってもMRAは重要です
腎臓も、アルドステロンの影響を強く受けます。
アルドステロンが過剰になると、
- 腎臓の中で炎症が起こる
- 腎臓が硬くなり、働きが落ちる
- 尿たんぱくが増える
といった変化が進みます。
MRAは、
- 腎臓の炎症やダメージを抑える
- 腎機能低下のスピードをゆるやかにする
ことで、腎臓を守る治療にもつながります。
【重要】フィネレノンは「糖尿病を合併したCKD」が適応です
ここは大切なポイントです。
フィネレノンは、
2型糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)の患者さん
を対象として効果が確認され、保険適応となっているMRAです。
フィネレノンの特徴
- 糖尿病合併CKDの方で
- 腎機能悪化
- 透析への進行
- 心臓病(心不全・心筋梗塞など)
を減らす効果が示されています
- 従来のMRAに比べ、
腎臓や心臓への保護効果に特化 - カリウムが上がる副作用が
比較的起こりにくいとされています
「糖尿病があり、腎臓を守る必要がある方のためのMRA」
という位置づけのお薬です。
※糖尿病のないCKDの方や、すべての心不全患者さんに使う薬ではありません。
「腎臓が悪いのに使っても大丈夫?」という疑問
MRA(フィネレノンを含む)は、
- 血液中のカリウム値が上がる可能性があります
そのため、
- 定期的な血液検査
- 腎機能に応じた用量調整
を行いながら、安全に使用します。
医師の管理下で使えば、腎臓と心臓を守るメリットが大きい薬です。
自己判断で中止しないようにしましょう。
MRAにはいくつか種類があります
- スピロノラクトン(アルダクトンA)
- エプレレノン(セララ)
- フィネレノン(ケレンディア)(糖尿病合併CKDが適応)
患者さんの
- 心不全の有無
- 腎機能
- 糖尿病の有無
- 他のお薬
を総合的に考えて、最適な薬を選択します。
まとめ
MRAは「将来の心臓と腎臓を守る治療」です
● 心不全の進行を抑える
●CKDの悪化を防ぐ
● 特に糖尿病合併CKDではフィネレノンが重要な選択肢
MRAは、
今の症状だけでなく、数年先の健康を守る薬です。
当院では、
最新の医学的根拠に基づいた治療と、
患者さん一人ひとりの体調に合わせた
丁寧な薬剤調整を心がけています。
心不全や腎臓のことで気になることがあれば、
どうぞお気軽にご相談ください。
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科
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