健康診断や人間ドックの腹部エコー、CT、MRIで「膵嚢胞(すいのうほう)」と言われ、不安になって受診される方が増えています。その中でも特に注目されているのが IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍) というタイプの嚢胞です。
名前が難しく、不安を感じる方も多いですが、まずは落ち着いて理解することが大切です。
IPMNとは?
IPMN(Intrapancreatic Papillary Mucinous Neoplasm)とは、膵臓の管(膵管)に粘液を出す細胞が増殖してできる腫瘍型の嚢胞です。
特徴としては、
- 膵管の中に粘液がたまる
- 時間とともに大きくなることがある
- 良性から悪性(がん)まで幅がある
という点が挙げられます。
〇重要ポイント
IPMN=がんではありません。
ただし、中にはがんになる可能性があるタイプもあるため、定期的な経過観察が必要になります。
IPMNは3つのタイプがあります
| タイプ | 特徴 | がんのリスク |
|---|---|---|
| 主膵管型 | 膵臓のメインの管が広がる | 高い |
| 分枝膵管型 | 枝分かれした膵管に嚢胞ができる | 比較的低い |
| 混合型 | 上の2つが混在 | 中~高い |
特に「主膵管型」や「混合型」は慎重なフォローが必要になります。
どんな症状が出る?
初期はほとんど症状がありません。
人間ドックや検査で偶然見つかることが多いです。
症状が出る場合、以下が代表的です。
- お腹や背中の痛み
- 食欲不振
- 体重減少
- 糖尿病の悪化または新規発症
これらがある場合は進行している可能性があるため、早めの受診が必要です。
診断方法
IPMNの診断には以下の検査が用いられます。
- エコー(超音波)
- CT
- MRI(特にMRCP)
➡膵管の形がよくわかるため重要 - EUS(超音波内視鏡)
➡嚢胞の中身や壁の性状からがん化リスクを評価しやすい - 必要に応じて細胞診(膵液の検査)
経過観察が必要な理由
IPMNには、長期間の経過の中で徐々にがん化する可能性があります。
しかし、すべてがんになるわけではありません。
経過観察の目安
大きさや形状によりますが、
- 小さな嚢胞(1cm前後) → 1年に1回
- 1.5~3cm → 半年~1年に1回
- 3cm以上や壁の変化がある場合 → 専門医で精密検査・手術検討
が一般的です。
医師から「定期的に見ましょう」と言われたら、必ず継続しましょう。
手術が必要になるケースは?
次の条件がある場合は手術が検討されます。
- 膵嚢胞が 3cm以上
- 壁に隆起(結節)がある
- 主膵管が 10mm以上拡張
- 症状がある(痛み・黄疸など)
- 急速に大きくなっている
これらは悪性化のサインとなることがあるためです。
治療よりも、“正しく見ていくこと”が大切
IPMNは、見つかったからといってすぐに治療が必要になる病気ではありません。
「放っておいていいもの」か
「注意して見ないといけないもの」か
を医学的に判断しながらフォローしていく病気です。
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科
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