「お腹の張り」「下痢や便秘が繰り返す」「原因がわからない腹痛」…それは“過敏性腸症候群(IBS)”かもしれません。
現代人に多いこの腸のトラブルには、実は食事を見直すことで大きな改善が期待できます。
今回は、注目されている食事療法「低FODMAP(フォドマップ)食」についてご紹介します。
◆ 過敏性腸症候群(IBS)とは?
過敏性腸症候群は、腸に明らかな異常が見つからないにも関わらず、腹痛や便通異常(下痢・便秘・交代型)が続く病気です。
ストレスや生活習慣、腸内環境の乱れなどが関与しているとされ、慢性的に悩まされている方も多いのが特徴です。
◆ IBSの改善に期待される「低FODMAP食」とは?
FODMAPとは、腸で発酵しやすくガスを発生させやすい糖質の総称です。
FODMAPは以下の頭文字を取ったものです:
Fermentable(発酵性)
Oligosaccharides(オリゴ糖:玉ねぎ・ニンニクなど)
Disaccharides(二糖類:乳製品に含まれる乳糖など)
Monosaccharides(単糖類:果糖など)
And
Polyols(ポリオール:キシリトール、ソルビトールなど)
これらの糖質は、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵してガスや水分の貯留を引き起こしやすいため、IBSの症状を悪化させることがあります。
◆ 低FODMAP食の進め方
低FODMAP食は、3段階のプロセスで進めていきます。
① 除去期(2~6週間)
FODMAPを多く含む食品を一時的に避けて、腸の状態を落ち着かせます。
例:玉ねぎ、にんにく、小麦製品、牛乳、リンゴ、はちみつ、豆類などを避ける。
② 再導入期(1種ずつ再挑戦)
一つずつFODMAPを含む食品を戻し、どの食品が症状を引き起こしているか確認します。
③ 維持期(個別化)
自分にとって問題の少ない食品を中心に、長期的に継続できる食生活へ調整します。
◆ 低FODMAP食で気をつけたいこと
極端な除去は避けましょう:栄養バランスが崩れると、逆に体調を崩すことがあります。
個人差があります:すべてのFODMAP食品が悪いわけではなく、人によって反応する食品は異なります。
医師や管理栄養士と相談しながら行いましょう。
◆ おすすめの低FODMAP食材(一部)
食べてもOKなもの(低FODMAP) 避けたい食品(高FODMAP)
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白米・そば・米粉パン 小麦・ライ麦製品
にんじん・ほうれん草・きゅうり 玉ねぎ・にんにく・キャベツ
バナナ(熟しすぎないもの) リンゴ・桃・スイカ
ヨーグルト(乳糖除去) 牛乳・ソフトチーズ
◆ まとめ
低FODMAP食は、過敏性腸症候群における“根本的な食事見直し”の選択肢として注目されています。
ただし、低FODMAP食が全ての過敏性腸症候群の方に有効とは限りません。
自己判断での制限ではなく、医療機関でのアドバイスを受けながら行うことが大切です。
「お腹の不調は、体からのサイン」
食事から見直して、腸から元気になりましょう。
参考:
Altobelli E, Del Negro V, Angeletti PM, Latella G. Low-FODMAP Diet Improves Irritable Bowel Syndrome Symptoms: A Meta-Analysis.Nutrients., 2017.
江田証「新しい腸の教科書」(池田書店)
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科
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