〜血圧を下げるだけじゃない、“心臓を守る治療”〜
心不全がある方にとって、高血圧は心臓に負担をかける大きな原因となります。
そのため、「血圧を下げること」だけでなく、同時に
● 心臓の負担を減らす
● 心不全の悪化を防ぐ
ことができるお薬選びがとても大切です。
今回は、心不全を伴う高血圧の治療でよく使われる薬について、患者さん向けにわかりやすくまとめました。
〇心不全+高血圧でおすすめされる薬の基本
心不全の治療において推奨される薬には、次の4つの柱があります。
| 薬の種類 | 期待される効果 |
|---|---|
| ACE阻害薬 / ARB | 血圧を下げ心臓の負担を減らす |
| β遮断薬 | 心臓の働きを落ち着かせ、寿命を延ばす |
| MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬) | むくみ改善・心筋の線維化を抑え心不全進行を防ぐ |
| SGLT2阻害薬 | 心臓・腎臓を守り入院や死亡リスクを減らす |
これらは単独ではなく、患者さんの状態に応じ組み合わせて使われます。
〇 具体的なお薬例と特徴
① ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
(例:エンレスト®〔サクビトリル/バルサルタン〕)
✔️心不全予防・進行抑制に特に有効
✔️従来のARBより心不全再入院・死亡リスクを下げる
✔️最近、日本でも使用が増えています
※腎機能や血圧値により調整が必要です。
② ACE阻害薬 / ARB
(例:レニベース®、オルメテック®、ミカルディス®など)
✔️血圧を下げるだけでなく、
心臓のリモデリング(硬くなること)を防ぐ
✔️長期予後を改善すると証明されています
※咳(ACE阻害薬)や腎機能・カリウム値に注意しながら使用します。
③ β遮断薬
(例:ビソプロロール®、カルベジロール®)
✔️心拍数を落ち着かせ、心臓の負担を軽減
✔️寿命を延ばす効果があることが証明済み
✔️急にやめると危険なので中止は必ず医師判断で
④ MRA(抗アルドステロン薬)
(例:スピロノラクトン®、エプレレノン®)
✔️利尿作用でむくみを改善
✔️心筋の線維化(硬くなること)を防ぎ心不全悪化を予防
✔️カリウム値チェックが必須です
⑤ SGLT2阻害薬
(例:フォシーガ®、ジャディアンス®)
元々は糖尿病薬でしたが、
✔️心不全患者の死亡・入院リスクを下げる
✔️糖尿病がなくても使える
✔️腎臓保護作用もある
とても注目されている新しい心不全治療薬です。
〇 利尿剤も併用されることがあります
(例:フロセミド®、トラセミド®)
✔️むくみ・息切れなど症状を和らげる薬
✔️あくまで症状改善が目的で、「寿命を延ばす薬」ではありません
〇 服薬で大切なこと
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| ✔飲み忘れない | 継続が予後改善に直結します |
| ✔自己判断で中止しない | 特にβ遮断薬は急停止厳禁 |
| ✔定期検査が必要 | 腎機能・電解質の確認は必須 |
| ✔血圧が低くても中止とは限らない | 心不全治療では「やや低め」がむしろ良いことも |
〇 生活習慣も薬と同じくらい大切です
✔ 塩分1日6g以下
✔ 体重・むくみの変化をチェック
✔ 無理のないウォーキング
✔ 禁煙・節酒
まとめ
〇心不全を伴う高血圧では、ただ血圧を下げるだけでなく、
「心臓を守る薬を組み合わせて使うこと」
がとても大切です。
治療は長く続きます。
わからないこと、不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科
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