― 乾燥の季節、咳が止まらないときに ―
秋は空気が乾き、朝晩の気温差が大きくなる季節。
「風邪は治ったのに咳だけ残る」「夜になると咳き込んで眠れない」
そんな声を外来でもよく聞きます。
長引く咳の背景には、*乾燥による肺のダメージ(中医学でいう「肺陰虚」や、冷え・痰の滞り(「寒痰」)など、体質の違いが関係しています。
ここでは、タイプ別におすすめの漢方をご紹介します。
① 乾燥タイプ(乾いた空咳・のどの痛み・声がかすれる)
特徴: のどが乾きやすく、咳が空咳。痰が少ない、もしくは出にくいタイプ。
原因: 秋の乾燥で「肺」の潤いが不足している状態です。
おすすめ漢方:
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
→ のどの渇きや乾いた咳に定番。潤いを補って咳を和らげます。 - 滋陰降火湯(じいんこうかとう)
→ 慢性化した乾いた咳、声枯れ、寝る前に咳き込むタイプに。
食養生:
白きくらげ・はちみつ・れんこん・梨・大根など、潤いを補う食材を。
② 冷えタイプ(痰が多く白っぽい・朝方に咳が強い)
特徴: 胸が重く、のどに痰が絡む。寒いと悪化する。
原因: 冷えによって気の巡りが滞り、痰が生じている状態。
おすすめ漢方:
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
→ 透明な痰、鼻水、寒気を伴う咳に。風邪後の長引く咳にも。 - 苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
→ 水っぽい痰が多く、体が冷えやすい人に。
食養生:
生姜・ねぎ・シナモン・あたたかいスープなどで体を温めましょう。
③ 痰熱タイプ(黄色い痰・のどが痛い・咳が激しい)
特徴: のどの痛みや口の渇きが強く、痰が黄色で粘つく。
原因: 体にこもった熱が肺に影響して炎症を起こしている状態。
おすすめ漢方:
- 清肺湯(せいはいとう)
→ 痰が黄色く熱っぽい咳に。慢性気管支炎や副鼻腔炎にも使われます。 - 竹茹温胆湯(ちくじょおんたんとう)
→ 咳・痰・のぼせ・不眠を伴うタイプに。
食養生:
豆腐・きゅうり・梨・緑茶などの清涼食材を取り入れましょう。
〇生活の工夫で咳を和らげる
- 加湿器で湿度を保つ(40〜60%が目安)
- 就寝時はマスクでのどを保湿
- カフェインや辛いものの摂りすぎを控える
- 軽いストレッチや深呼吸で肺を動かす
〇まとめ
秋の咳は、「風邪が長引いているだけ」と軽く見られがちですが、
体質の偏り(冷え・乾き・熱)を整えることで、改善が早まることも多いです。
漢方は、咳を「症状」だけでなく、「体のバランスの乱れ」として捉えます。
同じ咳でも人によって合う薬が違いますので、自己判断せずご相談ください。
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科
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