糖尿病性腎障害は、糖尿病が原因で腎臓がダメージを受ける合併症であり、最終的に腎不全に至ることがあります。近年、糖尿病性腎障害の進行を抑えるための新しい薬が開発されており、治療の選択肢が広がっています。ここでは、最新の薬や治療法を紹介します。
- SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は、糖尿病治療で最近特に注目されている薬です。この薬は、腎臓で糖を再吸収する働きを抑え、余分な糖を尿として体外に排出することで血糖値を下げます。さらに、この薬は腎臓の保護効果も持っていることがわかってきました。
腎保護効果の理由:
血糖値を下げるだけでなく、腎臓内の圧力(糸球体圧)を下げることで、腎臓へのダメージを軽減します。
尿中のナトリウムや糖を排出することで、腎臓への負担が軽くなり、腎臓機能の悪化を遅らせることが期待されています。
代表的な薬:
エンパグリフロジン(ジャディアンス)
ダパグリフロジン(フォシーガ)
SGLT2阻害薬は、特に心臓や腎臓の保護効果があるため、糖尿病性腎障害の進行を遅らせる効果があり、腎不全や透析を必要とするリスクを減らすために使用されます。
- GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬も、糖尿病性腎障害に対して新たな治療効果が期待されている薬です。この薬は、血糖コントロールに加え、心血管のリスクを低減することが示されていますが、最近では腎保護効果も報告されています。
腎保護効果の理由:
血糖値をコントロールしながら、腎臓の炎症を抑え、腎臓の機能低下を抑制します。
体重減少効果もあり、肥満が腎臓にかかる負担を減らします。
代表的な薬:
セマグルチド(オゼンピック、リベルサス)
デュラグルチド(トルリシティ)
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病患者の血糖管理だけでなく、腎臓や心臓の保護にも効果的で、特に腎障害を伴う患者に推奨されています。
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 (MRA)
MRAは、腎臓の機能保護に新たな効果を示す薬の一つです。MRAは、腎臓内での炎症や線維化を抑えることで、腎臓へのダメージを減らします。
代表的な薬:
フィネレノン(ケレンディア)
フィネレノンは、糖尿病性腎障害に特化した治療薬として開発され、最近の研究では、腎機能の悪化を遅らせる効果が認められています。また、心血管系のリスクを減らす効果も示されています。
- バイオテクノロジーによる新しい治療法
現在、糖尿病性腎障害に対する新しい治療法として、バイオテクノロジーを活用したアプローチが研究されています。例えば、腎臓の再生や修復を促す細胞療法や、腎臓の機能をサポートするための遺伝子治療などが開発中です。
まとめ
糖尿病性腎障害の治療は、血糖値をコントロールするだけでなく、腎臓を保護する薬がますます重要になっています。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬、そしてMRAなどは、腎臓機能を守り、病気の進行を抑える効果が期待されています。これらの新しい薬は、糖尿病性腎障害の患者にとって重要な治療の選択肢となっています。
参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」(南江堂)
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科の加地内科クリニック