過敏性腸症候群(IBS)(大腸過敏症)は、特定の器質的な異常がないにもかかわらず、腸の機能に関連するさまざまな症状が現れる疾患です。
原因としては、腸の運動異常などが推測されていますが、今のところ、はっきりしないようです。要因として、腸内細菌叢の変化やストレスなどの心理的要因が関連している可能性があります。
過敏性腸症候群における食事療法は、症状を改善するために非常に重要です。過敏性腸症候群の症状は人によって異なるため、食事に関しても個人の症状にあわせて変えていく必要があります。一般に過敏性腸症候群に推奨される代表的な食事としては、以下のものがあげられます。
1. 低FODMAP食
FODMAPは、発酵しやすい短鎖炭水化物のグループを指し、一部の人において腸内ガスが増加し、過敏性腸症候群の症状を引き起こすことがあります。低FODMAP食は、これらの炭水化物の摂取を制限することにより、過敏性腸症候群の症状が改善することがあります。
低FODMAP食で避けるべき主な食品群
- オリゴ糖: タマネギ、ニンニク、小麦、ライ麦、いんげん豆など。
- 二糖類: 牛乳、ヨーグルト、ソフトチーズ(ラクトースが原因)。
- 単糖類: リンゴ、ハチミツ、マンゴー、スイカ(フルクトースが多い食品)。
- 多価アルコール: 甘味料として使われるソルビトールやマンニトールなど。
低FODMAP食で推奨される食品
- 肉、魚、卵: 天然の肉、魚、卵はFODMAPを含まず、安全に消費できます。
- 特定の野菜: キュウリ、トマト、オリーブ、ニンジン、ジャガイモなど。
- 特定の果物: オレンジ、ブドウ、キウイフルーツなど。
- 穀物: 米、オートミール、キヌアなど。
2. 食物繊維の調整
便秘型過敏性腸症候群: 溶解性の食物繊維が有効であることが多く、オートミールやリンゴ、ナシなどが推奨されます。
下痢型過敏性腸症候群: 食物繊維の摂取を減らすか、不溶性繊維の摂取を控えることが推奨されます。不溶性繊維は便を増量し、腸を刺激する可能性があります。
3. 規則正しい食事の摂取
小分けにして頻繁に食事をすることで、腸にかかる負担を減らすことができます。大量に一度に食べることは腸を過剰に刺激する可能性があるため、避けることが望ましいです。
4. 脂質の摂取を控える
高脂肪の食事は過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあるため、脂肪の多い食品の摂取を控えることが推奨されます。
5. カフェインとアルコールの制限
カフェインとアルコールは腸を刺激し、特に下痢型過敏性腸症候群の人には不快な症状を引き起こす可能性があります。
6. 適切な水分摂取
十分な水分を摂取することは、特に便秘型過敏性腸症候群の人にとって重要です。水は便を柔らかくし、排便を容易にします。
以上の食生活で過敏性腸症候群の症状の改善が期待されますが、人によって原因や症状がさまざまで、全ての食養生があてはまるわけではありません。医師と相談し、地道に最善の治療法を探っていくことが大切です。
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豊中市上野東 消化器内科・漢方内科の加地内科クリニック